富士八海

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昨年、世界遺産に登録された富士山と周囲にある神社や湖沼などの構成資産。その構成資産のひとつに富士五湖の湖があります。しかしその富士五湖という名称は、実は昔からあったわけではないのです。   

江戸時代には、富士八海と呼ばれていました。富士吉田市にある明見湖と、現在は水が枯れている泉津(せんづ)湖、そして市川三郷町にある四尾連湖を含めた八つの湖を総称して富士八海と呼び、多くの富士講信者がこれらを巡り修行していたのです。これがいわゆる内八海巡りです。いずれも霊場とされ、それぞれに八大竜神を祭っています。  

富士五湖は、私たちも良く耳にして馴染もあります。しかし、その他の湖はあまり知られていないと思いますが、面白い話も結構あるのです。

まず、泉津湖には「御手洗竜王(みたらしのりゅう おう)」をまつっています。源頼朝が富士で狩りをした時に、家来ののどの渇きを癒すため浅間神社に祈りを込めて岩をむちで打ったところ、水が出てきたという伝説があります。

また四尾連湖には、昔から雨乞いの伝説がありました。今から三、四百年前。二人の兄弟の侍が、湖に住む怪牛を射止めますが、残念ながら犠牲になってしまいます。その年はひどい干ばつで人々が苦しんでいましたが、間もなく大雨が降り出したそうです。それ以来、干ばつの時には、兄弟の墓に詣でて牛の頭を湖水に沈めて雨乞いを行ったと伝えられています。

そして明見湖は、湖面に蓮が植生していることから「はす池」と呼ばれています。

これらのように富士山にまつわる名所には、隠れた伝説がいろいろあります。富士山周辺にちょっとお出かけになった際には、昔からの言われに耳を傾けて、新たな発見と共に郷愁の念にかられてみてはいかがでしょうか。


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